水戸地方裁判所 昭和62年(わ)169号 判決
本店所在地
茨城県鹿島郡神栖町神栖四丁目五番三一号
幸武建設株式会社
(右代表者代表取締役 野口幸治)
本籍
茨城県鹿島郡神栖町大字深芝二、五五九番地
住居
同県同郡同町神栖四丁目七番二七号
会社役員
野口幸治
昭和二三年九月二日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渋谷勇治出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人幸武建設株式会社を罰金一七〇〇万円に、被告人野口幸治を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人野口幸治に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人幸武建設株式会社は、肩書地に本店を置き、木造・鉄骨コンクリート建築工事の施工等を目的とする資本金三、五〇〇万円の株式会社であり、被告人野口幸治は、被告人会社の代表取締役として被告人会社の業務全般を統括掌理しているものであるが、被告人野口幸治は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、収入の一部除外、架空経費及び架空仕入れの計上などの方法により所得を秘匿した上
第一 昭和五八年五月一日から同五九年四月三〇日までの事業年度における、被告人会社の実際所得金額が八、五九九万六、八四五円であったにもかかわらず、同五九年六月二八日同県行方郡潮来町大字延方字三カト前甲一三五八番地所在の潮来税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二、六九五万一、八二一円で、これに対する法人税額が一、〇五四万六、四〇〇円である旨の虚偽の法人税額確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の同事業年度における正規の法人税額三、六一一万二、九〇〇円との差額二、五五六万六、五〇〇円を免れ
第二 昭和五九年五月一日から同六〇年四月三〇日までの事業年度における、被告人会社の実際所得金額が七、五八七万九、二二四円であったにもかかわらず、同六〇年六月二八日、前記潮来税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、六一九万二、三〇一円で、これに対する法人税額が五五〇万六〇〇〇円である旨の虚偽の法人税額確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の同事業年度における正規の法人税額三、一三五万四〇〇円との差額二、五八四万四、四〇〇円を免れ
第三 昭和六〇年五月一日から同六一年四月三〇日までの事業年度における、被告人会社の実際所得金額が六、三五四万七三二円であったにもかかわらず、同六一年六月三〇日、前記潮来税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三、一七九万四、五六二円で、これに対する法人税額が一、二五九万四、五〇〇円である旨の虚偽の法人税額確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の同事業年度における正規の法人税額二、六三四万五〇〇円との差額一、三七四万六、〇〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一 被告人野口幸治の当公判廷における供述
一 被告人野口幸治の検察官に対する供述調書
一 被告人野口幸治の大蔵事務官に対する質問てん末書一四通
一 野口幸江(三通)、野口登志子(二通)、大川喜美夫、藤城政次、斎藤文孝(二通)、大沼拓、斎藤利夫、植田喜一、斎藤政徳、内野弘文、野口賢男、吾妻一仁(二通)、今泉徳治の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 野口幸江、斎藤文孝、大沼拓、斎藤利夫、植田喜一(二通)、斎藤政徳作成の各答申書
一 大蔵事務官作成の修正損益計算書、脱税額計算書各三通
一 潮来税務署長作成の証明書
一 大蔵事務官作成の主要材料費調査書、完成雑工事調査書、外注労務費調査書、外注費調査書、受取利息調査書、支払源泉所得税調査書、事業税認定損調査書、その他所得調査書(損益計算書関係のもの)、増差所得調査書
一 登記官作成の登記簿謄本
一 検察事務官作成の電話聴取書
(法令の適用)
判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項(被告人会社については、さらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人野口幸治については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金一七〇〇万円に、被告人野口幸治については同法四七条本文、一〇条により犯情最も思い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において懲役一年二月にそれぞれ処し、被告人野口幸治に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文によりその二分の一ずつを各被告人の負担とすることとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 竹重誠夫)